近年、産業用(業務用)3Dプリンターは試作から最終製品の製造まで幅広く活用され、製造現場で欠かせない存在となっています。しかし、機種によって特徴や対応できる範囲が大きく異なるため、目的に合った選定が不可欠です。この記事では、用途やスペック、材料、環境、サポート体制などの観点から、最適な3Dプリンターを選ぶためのポイントを解説します。
産業用(業務用)3Dプリンターを導入する際は、用途や性能、コスト、設置環境など複数の要素を総合的に検討することが重要です。ここでは、使用目的の明確化、主要スペックの確認、造形方式の選択、材料対応とコスト、さらに設置環境とサポート体制の観点から、失敗しないプリンター選びのポイントを詳しく解説します。
まずは使用目的を明確にすることが重要です。試作やデザイン検証、治工具の製作、最終製品の直接製造など、用途によって求められる性能が大きく異なります。例えば、試作では短時間で形状確認できる低コスト・高速タイプが適していますが、最終製品の製造では高精度かつ耐久性のある材料対応が必要です。造形サイズや対応素材も用途に応じて選ぶべきポイントです。
主要スペックの確認も欠かせません。最大造形サイズや造形精度、部品の強度や耐熱性、カラー出力の必要性など、自社の用途に応じた条件を整理しましょう。このとき、必ず満たすべき必須条件(MUST)と、あれば便利な希望条件(WANT)に分けてリスト化すると、選択肢を効率的に絞り込めます。例えば、最終製品の製造では高精度・高強度・耐熱性がMUSTとなる一方、カラー出力はWANTとして優先度を下げることができます。
造形方式にも注目しましょう。FDM方式は、耐久性のある部品や治工具の製作に向いており、比較的低コストで扱いやすい方式です。一方、光造形(SLA/DLP)は高精細な造形が可能で、表面の美しさや細部の再現性を重視する試作やデザインモデルに適しています。粉末焼結方式(SLS/SLM)は強度の高い部品や金属製品の直接製造に向いており、機能性を重視した最終製品にも対応できます。
使用したい素材への対応可否も重要な確認ポイントです。樹脂や金属、特殊素材など、用途に応じて適切な材料が使用できることで、製品の性能や耐久性が大きく変わります。また、本体価格だけでなく、材料費や消耗品、メンテナンス費用も含めたトータルコストを考慮しましょう。材料や維持費が高額になる場合、ランニングコストが膨らみ、導入後の運用に影響するため、予算と使用目的に合わせたバランスの取れた選定が重要です。
プリンターを設置するスペースの確保や、造形時に発生する臭気や粉塵に対応する換気設備の整備、造形後の後処理に必要な設備の有無を確認しましょう。また、導入後のトラブルや操作習熟を支援するアフターサポートも重要です。メーカーによる保守サービスやトレーニング、操作マニュアルの提供の有無で、運用の効率性や安全性が大きく変わります。適切な設置環境と信頼できるサポート体制が整っていることが、安定した運用の鍵です。
産業用(業務用)3Dプリンターの選定では、用途を明確にして必要な仕様を整理することが第一歩です。試作や治工具、最終製品の製造など用途に応じて、造形方式や対応材料を適切に選びましょう。また、最大造形サイズや精度、耐久性、カラー出力の要否など主要スペックを整理し、設置環境や換気、後処理設備、材料費やメンテナンス費用を含めたコストのバランスも重要です。加えて、信頼できるサポート体制やトレーニングの有無にも注目してください。サポート体制は、安定した運用に欠かすことはできません。
外注待ちの長さ、ブレによるスピードの上げづらさ、大型・耐熱部品の作りにくさは、現場の生産性を下げます。 産業用(業務用)3Dプリンターを選ぶ際には、各課題解決に適した機能特徴を持つ製品を選ぶようにするとよいでしょう。ここでは、主な製造現場の課題別に、おすすめの製品を紹介します。


