業務用3Dプリンターの導入やリプレースを検討していると、「世界シェアはどのメーカーが強いのか」「日本ではどこを選ぶべきか」が気になってインターネットで情報を探す場面が多いと思います。ただ、調査会社ごとに母数の取り方や対象範囲が違っていたり、デスクトップ機と業務用が混ざっていたりして、見つけた数字がそのまま自社判断に使えるとは限りません。
Fortune Business Insightsのレポートでは、3Dプリンティング市場は2024年時点で約193億ドル規模に達し、そのなかで産業用(業務用)プリンターが金額ベースで大きな割合を占めるとされています。一方で、台数ベースでは低価格帯プリンターの比率が高く、「どのセグメントのシェアを見ているか」で意味合いが変わります。この記事では、そうした前提を整理しながら、業務用3Dプリンターのシェア率の正しい見方と活用法を解説します。
公開情報を整理すると、3Dプリンター市場の売上の多くを産業用プリンターが占め、その中でStratasysや3D Systemsが樹脂系業務用プリンターで長く主要プレイヤーとして扱われてきたことがわかります。金属系ではEOSが代表的なメーカーとして頻繁に言及され、航空宇宙や自動車向けの金属部品で多くの導入事例があります。
一方で、MarkforgedやHP、Desktop Metalのように、特定の材料や用途にフォーカスして存在感を高めているメーカーも増えています。たとえば炭素繊維強化樹脂の治具や、ナイロン粉末による少量量産部品、金属バインダージェットによる量産向け部品など、用途を絞って見ると、世界全体のシェア順位とは別の「主流プレイヤー」が見えてきます。業務用3Dプリンターを選ぶうえでは、この「自社の用途と価格帯に近いゾーンでどのメーカーが強いか」を見ることが大切で、世界全体の順位は技術の成熟度や供給体制の安定性を測る参考情報として扱うとバランスが取りやすくなります。
参照元:比較して選ぶ!おすすめの業務用3DプリンターGUIDE(https://www.recmbus-3dprint.com/knowledge/grobal_market-share.html)
樹脂系と金属系では、市場構造と主役になるメーカーが大きく異なります。各種レポートでは、樹脂系ではFDMやSLAなどの方式を中心としたプリンターが試作や治具、外観モデルといった用途で広く利用されていると説明されており、このゾーンではStratasysや3D Systems、UltiMaker、Formlabsなど複数社がシェアを分け合う構図が見られます。貴社の設計部門で「まずは樹脂試作から」という場合は、この樹脂系カテゴリのプレイヤー構成と実績が参考になります。
一方で金属3Dプリンターは、機械単価が高く導入台数も限られるため、EOSやNikon SLM Solutions、GE Additiveなど少数のプレイヤーに売上が集中しやすい傾向があります。ここでは、航空宇宙や医療など認証の厳しい領域での実績や、材料粉末とプロセスパラメータのライブラリがそのまま競争力につながります。金属で最終製品レベルの部品を狙いたい場合には、「金属系の中でどのベンダーがどれくらい実績を持っているか」を確認し、そのうえで対象材料や造形サイズ、後加工の前提が自社と合うかを見ていくことが重要です。
価格帯については、統計レポートごとに区切り方が異なりますが、日本の製造業の現場で導入検討をするときには、「数百万円クラス」と「それ以上の設備投資クラス」といったざっくりした予算感で議論されることが多く見られます。本記事では説明をしやすくするために、目安として「おおよそ500万円前後」を境にイメージして話を進めますが、これはあくまで導入検討時の感覚的なラインであり、市場統計上の公式な区切りではありません。
この目安で見ると、500万円より小さいゾーンでは、設計・開発部門での試作や治具製作、教育用途などが中心で、FDMや小型SLA・SLSといった樹脂系プリンターが主役になります。このゾーンでは、台数ベースで樹脂系メーカーが大きな割合を占め、世界シェア上位メーカー以外にも実績のある選択肢が多く存在します。
一方で、500万円を超えるゾーンになると、金属プリンターや大型粉末方式機が増え、治具・治工具の本格内製や少量量産、認証が必要な部品への適用が主なテーマになります。ここでは、台数シェアよりも一台あたりの投資額とランニングコスト、材料ラインアップ、サービス体制が重要になります。同じ「シェア上位」のメーカーでも、自社の量産規模や材料費の制約と合わなければ投資回収が難しくなるため、価格帯別シェアは「どのゾーンにどのメーカーが多いか」を把握する地図として捉え、そのうえで用途と予算に照らして候補を絞ると判断しやすくなります。
参照元:MarketReport.jp(https://www.marketreport.jp/3d-printer-market)
地域別に見ると、2024年時点で北米が3Dプリンティング市場の約4割を占め、次いで欧州、アジア太平洋が続くとされています。北米と欧州は航空宇宙や医療など高付加価値分野で早くから3Dプリントを採用してきた経緯があり、その分、産業用3Dプリンターの導入基数とベンダーの拠点も集中しています。
日本はアジア太平洋の中でも一定の市場規模と技術力を持ち、金属3DプリンターメーカーSLM Solutionsを買収したNikonや、ハイブリッド加工機を展開するDMG森精機など、日本発のプレイヤーも存在感を高めています。貴社のような日本拠点の製造業にとっては、「世界シェア上位で日本法人・代理店がしっかりしているベンダー」と「日本発で特定用途に強いベンダー」のどちらをベースにするかを整理し、自社工場の所在地近辺にサービス拠点や導入事例があるかも合わせて確認すると、運用面の不安を減らせます。
参照元:ShareLab NEWS(https://news.sharelab.jp/cases/other-fields/context-241101/)
シェア率を動かす要因としては、技術トレンドとマクロ環境があります。技術面では、樹脂系のFDMやSLA、粉末樹脂のSLS、高性能樹脂や金属を扱う各種方式が、それぞれ得意分野を広げながら導入を伸ばしており、特に最終製品や構造部品への適用が進む領域では、高機能材料や金属系技術を持つベンダーの売上が伸びやすい状況にあります。FDMは扱いやすさや材料コストの面から依然として広く利用されている代表的な方式の一つであり、「試作・治具向けの第一候補」として位置づけられることが多いです。
一方で、エントリーレベルの3Dプリンター市場では、中国メーカーが出荷台数の大半を占める状況が報告されています。台数ベースで見ると低価格帯のシェアが急速に伸びていますが、売上金額ベースでは依然として業務用・産業用プリンターが市場の中心にあります。貴社としては、ニュースで目にする「台数シェアの変化」が、自社が検討している業務用セグメントに本当に関係しているのかを意識して読み解くことが重要です。金属プリンターや大型粉末機のシェア構造は、エントリー機とは事情が異なるため、同じグラフの中で一括りにしない方が安全です。
シェア情報を選定に生かすには、最初に「用途」と「価格帯」をはっきりさせることが出発点になります。設計部門で樹脂試作が中心なのか、生産技術部門で治具と少量量産を狙うのか、あるいは金属部品の内製化まで踏み込みたいのかによって、見るべき技術と機種レンジが変わります。この整理をしたうえで、そのレンジに属するプリンターの中から、世界シェア上位のベンダーと日本で導入事例が多いベンダーを数社ピックアップします。
その段階で使うシェア情報は、「そのカテゴリで長く使われているメーカーか」「最近伸びてきたメーカーか」を見分けるための材料だと考えるとわかりやすくなります。前者は安定性やサポート網に強みがあり、後者は新技術やコスト面で魅力的な提案をしてくることが多い傾向があります。最終候補が二〜三社に絞れた段階では、自社部品でサンプル造形や短期トライアルを実施し、造形時間や後処理時間、材料コストを実測することで、「シェア上位かどうか」だけでなく、「自社にとって扱いやすいかどうか」を定量的に確認できます。
参照元:アイミツ比較(https://imitsu.jp/matome/printing/3d-printer-share)
業務用3Dプリンターのシェア率は、一見すると単純なランキングのように見えますが、実際には「どの技術」「どの価格帯」「どの地域」「どの用途」「どの導入規模」を切り出すかで意味が変わります。世界全体では産業用プリンターが金額ベースで市場の中心にあり、同時に台数ベースでは低価格帯プリンターの比率が高いというギャップもあります。こうした構造を理解したうえで、自社が見るべきシェア情報を意識的に絞り込むことが重要です。
実際の検討では、まず自社の用途と投資レンジを整理し、そのセグメントで実績を持つベンダーを候補に挙げ、世界シェアや地域別シェアは「安定性と成熟度の指標」として使うと考えるとバランスが取りやすくなります。そのうえで、自社部品での検証を通じて、カタログやランキングでは見えない運用面のフィット感を確かめていけば、シェア率に振り回されず、現場の事情に合った導入やリプレースの判断につなげやすくなります。
参照元:比較して選ぶ!おすすめの業務用3DプリンターGUIDE(https://www.recmbus-3dprint.com/knowledge/grobal_market-share.html)
本記事で業務用3Dプリンターのシェア率の見方やベンダー選定の考え方を整理していただいたうえで、次は具体的な機種選びに進んでいきたいところだと思います。製造業では、多様化するニーズへの対応や生産性向上の観点から、開発・設計だけでなく製造・加工現場においても、業務用3Dプリンターの活用が注目されています。
一方で、業務用3Dプリンターには多様な価格帯や機能を持つ製品があり、導入したものの「精度が出せない」「運用が難しくて現場に定着しない」といった理由で、本来の効果を発揮できていないケースも見られます。
このサイトでは、こうした失敗を避けたい製造業のご担当者向けに、用途や目的別におすすめの業務用3Dプリンターを厳選してご紹介します。自社の用途・予算・体制に合った一台を検討する際の、次のステップとしてご活用ください。
外注待ちの長さ、ブレによるスピードの上げづらさ、大型・耐熱部品の作りにくさは、現場の生産性を下げます。 産業用(業務用)3Dプリンターを選ぶ際には、各課題解決に適した機能特徴を持つ製品を選ぶようにするとよいでしょう。ここでは、主な製造現場の課題別に、おすすめの製品を紹介します。


